IT資格の中でも受験者が多く有名な資格であるITパスポート試験と基本情報技術者試験ですが、受験を考えるとどのような違いがあるのか気になりますよね。
本記事では、合格率・難易度・出題範囲・必要な勉強時間・就活や転職での優位性など様々な観点で違いを徹底解説します。
ぜひ資格受験を検討する上で、参考にしてみてください。
ITパスポート試験と基本情報技術者試験について
試験概要
ITパスポート試験と基本情報自技術者試験は両資格ともにIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が主催している国家試験となっています。
引用: IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「試験区分一覧」より
ITパスポート試験は「レベル1」、基本情報技術者試験は「レベル2」に位置しています。
受験者層も大きく事なっており、ITパスポートは幅広い業種の社会人にも人気があり、ITリテラシーの証明として活用されています。
それに対し、基本情報技術者試験はITエンジニアを目指す人の登竜門とされ、専門職への第一歩となります。
どちらも国家試験ですが、目的や難易度、受験者層に明確な違いがあります。
レベル | 試験名 | 概要 |
---|---|---|
レベル1 | ITパスポート試験 | ITの基礎的な知識が問われる試験。 IT初心者や大学生にも人気。 |
レベル2 | 基本情報技術者試験 | 基礎的なIT知識と簡単なプログラミング、アルゴリズムをが問われる試験。 ITエンジニアの登竜門。 |
情報セキュリティマネジメント試験 | セキュリティに関する基礎的知識をが問われる試験。 業界を問わず、セキュリティに関連する社会人が幅広く受験。 | |
レベル3 | 応用情報技術者試験 | 設計、運用、マネジメントなど応用的な知識を問われる試験。 中堅技術者レベル。 |
レベル4 | 高度試験区分 | 高度な専門分野の知識やマネジメントスキルが問われる試験。 スペシャリスト・専門家レベル。 |
試験日程と受験回数
ITパスポート試験と基本情報技術者試験の試験日程・受験方式・申し込み方式はすべて同じです。
項目 | ITパスポート試験 | 基本情報技術者試験 |
---|---|---|
試験実施日 | 年間を通じて受験可能 | 年間を通じて受験可能 |
受験方式 | CBT方式 | CBT方式 |
申し込み方法 | インターネット申し込み | インターネット申し込み |
2020年~2023年に実施された基本情報技術者試験の制度変更以前は、ITパスポート試験と比較して試験実施日や受験方式は異なっていましたが、現在は両方ともに同内容となっています。
料金比較
ITパスポート試験と基本情報技術者試験の受験料金は7,500円でどちらも同額ですが、支払方法に若干の違いがあります。
試験名 | 受験料(税込) | 支払い方法・手数料(例) |
---|---|---|
ITパスポート試験 | 7,500円 | 無料:クレジットカード 有料:コンビニ決済 ※有料の場合+187円の手数料 |
基本情報技術者試験 | 7,500円 | 無料:クレジットカード 有料:コンビニ決済、Pay-easy ※有料の場合+330円の手数料 |
表に記載されている通り、両試験の受験料は共通ですが、支払方法によって料金が変わります。
クレジットカードで決済した場合は両試験ともに手数料がかかりません。しかし、コンビニ決済等の他の支払い方法を利用した場合、ITパスポート試験は+187円の手数料がかかり、基本情報は+330円の手数料がかかるとの事です。
基本情報受験者の場合は特に手数料の料金が少し高い値段となっているので、基本的にはクレジットカードでの支払いをお勧めします。
※注意点
バウチャーを利用する場合、会社や学校等の団体がバウチャー発行手数料を負担するケースがほとんどのため、多くの場合は手数料無料で受験する事が可能です。
新卒就活・転職での評価比較
ITパスポートと基本情報が新卒就活や転職でどの程度評価されるのかを比較表にしてまとめした。
属性 | ITパスポート | 基本情報技術者試験 |
---|---|---|
新卒就活 | 学習意欲とIT基礎知識をアピールする事ができるため、評価につながりやすい。 | 学生の時点ですでにIT基礎知識を身につけている事が証明できるため、大きな評価につながる。 |
20代転職 | 一部企業で小さな評価に繋がる可能性がある。 | IT基礎知識を身につけている事が証明できるため、評価につながりやすい。 |
30代以降の転職 | 評価される可能性は少ない。 | IT基礎知識を身につけている事が証明できるため、一定程度評価の対象となりやすい。 |
まずITパスポート試験について、新卒就活では学習意欲とIT基礎知識を示せるため、一定の評価を得やすい傾向があります。
しかし20代の転職では一部企業で小さな評価に留まることが多く、30代以降になると評価される機会はほとんどありません。
全体としては、入門資格としての価値が中心で、IT未経験からの第一歩として有効です。

次に基本情報について、新卒就活ではITパスポート以上に専門性の高いIT基礎知識を学生の段階で習得していると判断されるため、高い評価につながります。
20代の転職でも幅広い企業で評価されやすく、若年層のポテンシャル採用にも好影響があります。
30代以降でも、基礎知識を有している客観的な証明となるため、一定の評価対象になりやすい資格です。
全体的に、就活・転職の両方で強いアピール力を持ち、特にIT職種を目指す場合は長期的なキャリア形成に有利です。


最後に、上記でITパスポートと基本情報が新卒就活や転職でどの程度役に立つのか解説しましたが、資格以上にこれまでの経験や、早い段階で就活や転職に取り組む事できているかどうかがキャリアの成功可否を大きく決める要素となります。
上記の記事では、おすすめの就活説明会や転職サービス等も掲載しているので、キャリアアップを検討している方はぜひ上記の記事を確認してみてください。
ITパスポートと基本情報の合格率と試験難易度について
合格率の比較
次の表は2019年~2023年のITパスポートと基本情報技術者試験の合格率比較表になります。
年度(西暦・年号) | ITパスポート試験の合格率 | 基本情報技術者試験の合格率 |
---|---|---|
2019(令和元年) | 54.3% | 22.4% |
2020(令和2年) | 58.8% | 30.2% |
2021(令和3年) | 52.7% | 31.5% |
2022(令和4年) | 51.6% | 28.5% |
2023(令和5年) | 50.3% | 27.3% |
ITパスポート試験の合格率は50〜58%と高い合格率となっている事に対して、基本情報技術者試験は約22〜31%と合格率が低くなっています。基本情報技術者試験の合格率はITパスポート試験の2分の1程度となっている事から、合格率を単純に比較すると難易度差が大きい事が分かります。
難易度の比較
次の表はITパスポートと基本情報の難易度を比較した表になります。
項目 | ITパスポート試験 | 基本情報技術者試験試験 |
---|---|---|
IPAの試験区分 | レベル1 | レベル2 |
対象者の目安 | 企業の全職種に必要なIT基礎力(非IT職含む) | 情報系学生やITエンジニアの登竜門 |
合格率(2019年~2023年) | 約50%〜58% | 約22%〜31% |
勉強時間の目安 | 30〜50時間 | 100〜200時間 |
難易度総合評価 | ★☆☆☆☆ | ★★★☆☆ |
まずIPA区分を見ると、ITパスポートはレベル1で基本情報はレベル2となっており、レベル差は1しか変わらない事が分かります。しかし、合格率を比較するとITパスポート試験の合格率は基本情報の2倍の数値となっており、IPAのレベル区分以上に大きく難易度差がある事が分かります。
また必要な勉強時間でも大きな差が生じている事から、難易度総合評価はITパスポート試験が★1、基本情報技術者試験が★3と設定しました。
試験合格に必要な勉強時間の比較
受験者の属性別にITパスポート試験と基本情報技術者試験の合格に必要な勉強時間をそれぞれまとめました。
※勉強時間は「合格体験記」・「IT資格コミュニティ」・「その他調査」を元に推定しています。
受験者の属性 | 勉強時間(ITパスポート) | 勉強時間(基本情報) | 備考 |
---|---|---|---|
社会人(IT関連職・エンジニアなど) | 約20~40時間 | 約70~120時間 | 基礎知識があるため短期間で対策可能だが、基本情報はアルゴリズムなど業務で触れる事が少ない分野の補強が必要 |
大学生(理系・情報系) | 約30~60時間 | 約80~150時間 | 理系は理解が早いが、ストラテジ分野(iパス)や用語暗記(FE)は要対策 |
社会人(非IT職)・大学生(文系) | 約40~80時間 | 約100~250時間 | 初学者はIT用語やネットワーク理解に時間FEはさらに専門的な学習が必要 |
属性によって必要な学習時間は異なりますが、全体を俯瞰的に見てもITパスポート試験の2倍以上の勉強時間が基本情報合格には必要な事が分かります。要因を探ると両試験の学習時間に大きな差が生じている原因は2点あります。
1点目に、試験の数の違いです。ITパスポート試験は試験が1つである事に対して、基本情報は科目A科目Bと2つの試験を受験する必要がある事が大きな学習要因の違いの一因となっているのでしょう。
2点目に、学習内容の専門性です。もちろんITパスポート試験でもストラテジ分野などはIT関連の業務をしている社会人や理系の学生でも別途資格のために学習を行う必要があるでしょう。しかし、大半は基礎的な部分が多く一度耳にした事のある内容となっているため、素早く理解する事ができます。しかし、基本情報はアルゴリズムを筆頭に専門性が高く、普段なじみのない領域の問題が多数出題されます。このように普段なじみのない専門性の高い出題内容が増える事が必要な学習時間が異なる要因となっています。
ITパスポートと基本情報の試験構成と試験範囲について
試験構成の比較
ITパスポートと基本情報の試験時間・問題数。回答方式・合格基準をまとめた表になります。
項目 | ITパスポート | 基本情報技術者試験 |
---|---|---|
試験時間 | 120分 | 科目A:90分 科目B:100分 |
問題数 | 100問(全問必須) | 科目A:60問 科目B:20問(全問必須) |
解答方式 | 四肢択一式(マーク方式) | 科目A:四肢択一式(マーク方式) 科目B:多肢選択式(記述なし) |
合格基準 | 総合得点600点以上(60%以上) 3分野すべて300点以上 | 科目A:60%以上 科目B:60%以上 |
試験時間は基本情報が科目Aと科目B試験の2試験となっている事から、ITパスポートと比較して約2倍の試験時間の長さとなっています。問題数を見てみると、各問題の難易度差はあるものの、意外にもITパスポートの方が基本情報よりも10問ほど問題数が多くなっています。また、合格基準は両試験とも60%以上となっています。しかし、厳密にはITパスポート試験ではテクノロジ・マネジメント・ストラテジの各分野で300点以上(30%以上)の得点が必要となります。
試験範囲の比較
次の表はITパスポート試験と基本情報技術者試験の試験範囲を比較した表になります。
※基本情報は科目A試験(午前試験)と科目B試験(午後試験)があるため、2列でまとめています。
分野 | ITパスポート | 基本情報(科目A) | 基本情報(科目B) |
---|---|---|---|
テクノロジ | 【約40問出題】 コンピュータ、ネットワーク、セキュリティ、データベースなど | 【約35〜40問出題】 コンピュータ構成、ネットワーク、OS、DB、セキュリティ、ソフトウェア開発など | – |
マネジメント | 【約20問出題】 プロジェクトマネジメント、システム開発、ITサービス管理など | 【約8〜10問出題】 プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント、システム監査など | – |
ストラテジ | 【約40問出題】 経営戦略、会計、法務、ビジネス知識、企業活動など | 【約10〜15問出題】 経営戦略、企業活動、法務、システム戦略など | – |
アルゴリズム | – | – | 【約16問出題】 擬似言語読解・トレース、基本的アルゴリズム、データ構造、応用アルゴリズムなど |
セキュリティ | ※テクノロジ分野にて出題 | ※テクノロジ分野にて出題 | 【セキュリティ4問】 暗号化、脅威と対策、セキュリティポリシーなど |
出題範囲を比較すると、ITパスポートと基本情報の科目A試験の出題範囲は、両試験ともにテクノロジ・マネジメント・ストラテジの3分野となっており、同じ出題範囲である事が分かります。しかし、基本情報技術者試験の科目B試験ではアルゴリズム分野が出題範囲となっており、ITパスポート試験とは全く異なる出題範囲から問題が多数出題される試験となっています。
まとめ
ITパスポート試験と基本情報技術者試験は本記事に記載の通り想定以上に難易度差があります。しかし両試験ともIPAが主催する国家資格であり、ITの知識を身につける事ができる良い試験となっています。
ぜひ、自分のスキルや目指しているキャリアに合った受験資格を取得に挑戦してみましょう。
あなたの合格を応援しております!